わさびについて感じたことや体験など、わさび雑感を綴っています。
- 美味しい食べ方
- 投稿日 2022-04-14
わさびと調味料
わさびは醤油と一緒に味わうことが多い香辛野菜ですが、過去にはどのような調味料と組み合わされていたのでしょうか。
先人の知恵から新たな組み合わせや使い方を考えてみたいと思います。
汁物にわさび
わさびの歴史は古く、最も古い記録は飛鳥時代にまでさかのぼります。当時は薬草としての位置づけであったと考えられています。
平安中期頃からわさびは香辛料として食用に利用され始めます。平安時代には調理の段階で味付けするのは汁物類だけでした。
多くは食べる際に自分の好みで、塩、酢、酒、醤などの調味料を用いていたようです。わさびは汁物に加えて味の変化を楽しんでいたものと考えられています。
和食辞典には「わさび澄まし汁」という料理が記載されています。汁物にもわさびを添えると新しい発見がありそうです。
酢とわさび
室町時代になると、わさびを料理で利用することが定着します。生魚を食べる際には、わさびは酢と合わされることが多かったようです。鳥や貝にも用いられていたことが分かっています。
現代でもわさび酢は和食で用いられています。酢の物の合わせ酢や焼き魚に添えられます。わさび酢は合わせ酢のひとつで、二杯酢や三杯酢におろしたわさびを合わせたものです。
煎り酒とわさび
室町時代初期の記録に、「鯉の刺身、煎り酒、わさび」の記載があります。室町時代には煎り酒とわさびの組み合わせも始まっていたようです。
煎り酒は、日本酒に梅干等を入れて煮詰めたものです。醤油に比べ塩分控えめです。さっぱりした旨味で素材の風味を生かすため、白身魚や貝類の刺身に相性がよいとされています。
江戸時代の料理書には「熬酒は鰹一升に梅干十五乃至二十、古酒二升、水少々、溜り少々を入れて一升に煎じ、漉し冷してよし、また酒二升、水一升入れて二升に煎じ使ふ人もある。」と記載されています。
わさびとの相性もよい煎り酒は、幻の調味料にしておくのは勿体ない美味しさです。煮物やおひたし、炒め物に使うなど色々な料理に活用できそうです。
醤油とわさび
江戸中期には定置網漁が発達し、マグロが本格的に漁獲されるようになりました。同時期に野田や銚子で醤油産業が発達し、マグロを醤油に漬けて「ヅケ」で食べるようになります。天明元年(1781年)には伊豆半島の伊東港から江戸へ船によってわさびが輸送されるようになりました。
マグロ、醤油、わさび普及がそろった後の文政年間(1818~1830年)に江戸で握り寿司が考案されました。握り寿司はたちまち一斉を風靡したといわれています。
醤油とわさびの組み合わせは、誰もが認める美味しさです。
塩とわさび
最近では肉をわさびで味わう食べ方が浸透してきました。
寿司や刺身などの和食で醤油と一緒に組み合わせることの多いわさびですが、日本人の魚の消費量は減少傾向にあります。一方で、肉類(牛肉、豚肉、鶏肉の合計)の一人当たり年間供給量は長期的に増えています。わさびには消化吸収を促進する作用があります。
和牛を塩とわさびで食べるのがスタンダードになる時代がやってくるかもしれませんね。