わさびと...

背景のひとつにわさびの生産量の減少があります。
2020年の国産わさびの根茎（すりおろす部分）の生産量は、450トンです。2005年には1,099トンの生産量がありましたので、15年間で約6割も減少しています。
今後もこのスピードで減少した場合、数少ない日本原産の栽培植物であるわさびが、なかなか手に入らない食材になってしまうのではないかと心配になります。

わさびの栽培量が減少している背景には、獣害や温暖化、生産者の高齢化、日本人の魚離れなど複合的な要因があります。わさびは地の恵みと丁寧な手仕事によって作られています。
将来にわたって、わさびの恵みが得られるためには、日本固有の植物遺伝資源を守ることや栽培技術の伝承、わさびを食べる文化を作ることが必要だと考えられています。
そのなかで、わさびを食べる文化作りについては、わさび好きの素人でも一助となれるのではないかと思っています。
施策を検討するために、大学院の在校生や修了生などを対象にわさびについてのアンケート調査を実施しました。
アンケートの回答者の95%は日常的にわさびを使った料理を食べていましたが、生のわさびを使っているのは、98名中1名でした。
一方で、日頃はチューブ入りわさびなどを利用している人の86％が、「家庭でも生の本わさびを食べたい」と回答しています。
生のわさびを食べたいにも関わらず、なぜ購入しないのでしょうか。
理由のトップは、「使い切れない」でした。

アンケートでは、「刺身や寿司、焼き肉くらいしか、わさびの用途を思いつかない」というコメントがありました。
そこで、料理レシピサイトを検索してみました。その結果、365万件のレシピが掲載されているなかで、本わさびを使ったレシピは、わずか104でした。
それならば、普段食べているわさびの食べ方を紹介しようと思ったのが、美味しい食べ方を紹介しはじめた理由です。

わさびの美味しい食べ方を探しながら、身近な食材や料理の歴史を調べるのは楽しい時間です。
例えば、蕎麦とわさびの組み合わせの始まりは、江戸時代に蕎麦つゆに使う鰹節の生臭さを消す目的でわさびを組み合わせたという説です。
蕎麦つゆが美味しくなった現代では、わさびを蕎麦つゆに溶かさないのが、「通」の食べ方といわれているようですが、由来を知るとなかなか面白いと思います。
いずれにしても生のわさびで食べる蕎麦は格別な美味しさですね。

また、わさびサポーターの方からも教えていただく情報も貴重です。精進料理にわさびが多く使われていることなどを教えていただきました。
わさびを知ることが食の再発見につながっていると感じています。

政府の平成28年社会生活基本調査によると、家事関連の時間は減少しています。具体的に家事に費やす時間は、男性は19分に対して、女性は減少しているものの2時間24分です。
民間の調理時間の調査によると、多くの人が調理に関する家事を時短したいと考えているようです。

家事を時短したい気持ちはよくわかります。
というのが、私自身、リモートワークを始める前は、帰宅してから限られた時間で慌ただしく調理をしていました。
でも、食いしん坊なので、美味しくないとがっかりします。
時短でも美味しく感じられるように、調理方法や調味料を工夫したり、総菜も活用したりしながら料理を作っています。

パックに入ったもずく酢を器に移して、生のわさびを添えるだけなんてこともざらです。
わさびのおかげで、もずく酢が上品な深みのある味になり、少しだけ豊な気持ちにしてくれます。
生のわさびをおろすには、1分もかかりません。
おろしている時の音や香り、手触りも含めて、ゆったりした気持ちにしてくれるような気がします。
今後は、こんなことも伝えていけたらと思っています。